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( ´_ゝ`)ヘッドフォン、ヘッドラインのようです(´<_` )



いつものようにヘッドフォンをはめる。
そして、俺は虚空へと向けて話しはじめた。


( ´_ゝ`)「あーあー、ハローハロー聞こえますか?」


ヘッドフォンのその向こう。
音楽プレイヤーのそのまた先からは、弟の声が響いている。



( ´_ゝ`)「ふざけるなって?
      ふむ。弟者にはこれがふざけているように聞こえるのですかと」



――俺の双子の弟は現在、海の向こう。
赤道の超えた先の、世界で6番目に面積の大きい国にいる。









( ´_ゝ`)ヘッドフォン、ヘッドラインのようです(´<_` )






(*´_ゝ`)ノシ「本日の弟者ヘッドラインは3本。
         スーパーの米がマズイ
         部屋の掃除にチャレンジするも失敗
         英語で道案内に成功。弟者喜びを語る!の3本だ」


ヘッドフォンからアニソンを垂れ流しながら居間へと入ると、そこには家族が勢ぞろいしていた。
ガタイのいい頼れる母。ハゲだが細やかな気配りのきく父。小さく愛らしい妹。そして、無駄にナイスバディな姉。
……勢ぞろいなのはいいが、一人暮らしのはずの姉もいるというのは、どういうことだろうか?


∬´_ゝ`)「連休だから帰ってきたのよ」

( ´_ゝ`)「……おk。把握した。おかえりエルダーシスター」


俺の表情を読んだのか、姉――姉者が返事をする。
耳元に流れ続けるアニソンを止めながら返事を返すと、姉者は不敵に笑いながら芝居がかった動作で手を上げた。


∬´_ゝ`)ノ「ただいま愚弟。冷蔵庫に土産のケーキがあるから食べなさい」

ヽ(*´_ゝ`)ノ「わーい、お姉ちゃんだいすきー」

∬#´_ゝ`)「今さらお姉ちゃんとか言うな、キモイ」


……我が家の姉は見てくれだけはいいが、辛辣である。




l从・∀・ノ!リ人「むー。妹者のほうが、おっきい兄者より姉者のこと大スキなのじゃー」


そんな俺と姉者のやり取りを聞いていたのか、妹――妹者が声を上げる。
年の離れたこの妹は、ぱっちりとした目が可愛らしい小学生だ。


 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「妹者。妹者。お父さんのことは好きか?」

l从>∀<*ノ!リ人「だいすきなのじゃー」

 彡⌒ミ
(*´_ゝ`)「おお!」


そして、俺の父こと父者は、末娘である妹者のことをすさまじく溺愛している。
でもまあ、俺も弟も姉者もこの扱いの差は差別だというような年はとっくに過ぎている。
そのため兄弟仲が悪くなることもないまま、我が家の妹は甘やかされ続けている。


l从・∀・*ノ!リ人「でも、妹者は母者がいちばんスキなのじゃー」


 彡⌒ミ、
( ´・_ゝ・`)ショボーン         Σ(´く_` ;)「父者が知らない人に!?」



 @@@
@ _、_@ 
 (* ノ`) 「まったく。褒めたって何も出ないよ」

l从・∀・*ノ!リ人 エヘー


妹者のかわいいけれど残酷な言葉に、テレビを眺めていた母――母者が口元を和らげる。
プロレスラーのような体格の母者もまた、どういうわけか姉者と妹者には甘かった。


∬´_ゝ`)「妹者と年が離れていて本当によかったわー。
      小さい子かわいい。1歳とか2歳差だったら絶対キレてた」


妹者と母者たちの一連のやり取りを眺めていた姉者が、ほうと息をつく。
気持ちはわからなくもないが、流石にそれは物騒じゃないか?
だが、女というものは怖い。下手に口答えしようものなら最悪だ。俺はそれを姉者から学習した。
俺は学習したとおり口答えはせずに、当たり障りの無い言葉で返事をする。


( ´_ゝ`)「恐ろしい言葉が聞こえたような気がするが黙っておこう。
      ふむ。姉者と妹者がそのくらいの年の差だと、妹者は俺らの姉ちゃんということになるな」

∬*´_ゝ`)「だったらどうする? 妹者のことを小さい姉者とか、妹者お姉ちゃんと呼ばなきゃいけないわよ」

( ;´_ゝ`)「ふむ。それは……どうする、弟者?」








                      『どうすると急に言われても。そもそも何が起こっているのか、俺にはさっぱりなのだが』








――ヘッドフォンの向こう。止まった音楽プレイヤーの先から、声が届く。

ヘッドフォンから聞こえるのそれは、俺以外の人間には聞こえない弟の声だ。
妄想とか幻聴のたぐいではない。
どういうわけか俺と弟者は、遠くにいてもヘッドフォンを通じて会話ができるのだ。


( ´_ゝ`)「何が起こってるかって、そんなの見れば……」


俺は弟の声に、俺は返事をし――、答えを返すはずの弟はここにはいないことに気づく。
そうだ。ここにはいないから、何が起こっているのかわからないのだ。


流石 弟者。俺、流石 兄者の弟にして片割れ。
そっくりな顔、そっくりな声、同じ身長で、ほぼ同じ体重。
自分と同じ日に生まれて、ずっと同じ家で育ってきた一卵性の双子の弟。


( ´_ゝ`)「……そうか。弟者は、」


生まれた時から大半の時を共に過ごしてきた弟は、時差一時間の南の大陸に留学中だ。




 @@@
@ _、_@ 
 (   ノ`) 「……何、ぶつぶつ言ってるんだい。
       ほれ、ケーキとお茶だよ。食いな」

(;´_ゝ`)ハッ


母者の声に、我に返る。
いつの間にやらケーキの載った皿と湯のみを手にした母者が、俺に皿を差し出している。
受け取った皿にのったケーキに飾られた生クリームとイチゴがうまそうで、思わずゴクリと息を呑む。


ヽ(*´_ゝ`)ノ「流石だな、母者!」


先程までの思考を放り投げて、俺はケーキへと飛びついた。
どこから食べようか。やっぱりイチゴは最後だよな。

 @@@
@#_、_@ 
 (  ノ`) 「流石なのはいいが、いつまで耳あてなんかしてるんだい? さっさと外しな!」

( ´_ゝ`)「耳あて?」

 @@@
@#_、_@ 
 (  ノ`) 「いつもガチャガチャいってるそれだよ」




母者の言っていることがよくわからない。
が、しばらく考えて俺はようやく、そういえばヘッドフォンをつけっぱなしだったということに気づいた。


( ´_ゝ`)「なるほど、耳あてか」


俺は一瞬納得するものの、すぐに「これは耳あてじゃなくてヘッドフォンだ」と、言おうとしてやめた。
母者にとって横文字はみんな似たようなものだ。
本人にまったく直す気がないから、いくら訂正した所で次の瞬間には元に戻る。
だから言っても意味が無いし、最悪の場合。床に叩きつけられるくらいは覚悟しなければならない。


( ´_ゝ`)「へーい」

 @@@
@ _、_@ 
 (* ノ`) 「よろしい」


母者の間違いの訂正と、自分の一大事を天秤にかけた結果。俺は素直に母者の言葉を受け入れることにした。
おとなしく返事をしてヘッドフォンを外すと、これまでよく聞こえなかった周りの音がやたらと大きく響く。
母者の持つ湯のみと皿がたてる、カチャという音。妹者が椅子へと勢いよく飛び乗るガタリという音。
うーむ。音量を急に上げたみたいだなぁなんて、呑気なことを思ってみたりする。



 彡⌒ミ
(*´_ゝ`)「そういえば、弟者もよくつけていたよなぁヘッドフォン
       懐かしい。昔は、よく儂のを持ちだして遊んでいたものだが……」

 @@@
@#_、_@ 
 (  ノ`) 「アンタ。まさか今、つけてるそれも……」

( ;´_ゝ`)て「これは俺がバイトして買ったやつだぞ、母者」


母者の言葉に、フォークを取ろうとした手が止まった。
どうしてそんな人を殺せそうなほど鋭い目で睨むのだと、思わず母者に訴えたくなったがそれはグッと我慢した。
俺だって余計な一言で、死にたくはない。
そんな俺の気持ちが通じたのか、母者は「フーン」とつぶやくと、テレビの近くへと再び座り込む。


( ´_ゝ`)「さてと、さっそくケーキを……」

∬´_ゝ`)「それで、弟者は向こうでどうしてるの? 連絡はあるの?」


姉者の言葉に、またしても俺の手の動きは止まった。
ケーキは名残惜しいが、食べていては返事が出来ないし、姉者に殴られかねない。
俺は内心ため息をつくと、姉者へと向き直った。



( ´_ゝ`)「弟者は元気だよ」


そもそも考えてみれば俺が居間に来たのは、弟者の近況を伝えるためだった。
姉者の帰宅と、ケーキに釣られていてすっかり忘れていた。


l从・∀・*ノ!リ人「元気なのじゃ?」

( ´_ゝ`)「ああ、いつもどおり元気」


ついさっきも返事してきたしという言葉は、ぐっと喉の奥に飲み込む。
ヘッドフォンから声が聞こえてきたなんて言った日には、病院送りにされかねない。

 彡⌒ミ
(*´_ゝ`)「ああ、それはよかった。
       兄者、今日の弟者はどんな感じなんだい?」

( ´_ゝ`)「よし、出血大サービスでもう一度言うか」


俺は息をつくと、両手を上げる。
その行動に特に意味は無いが、勿体つけるためにも間は必要だ。
そして、俺はポーズを決めると、本日二度目の弟者の近況報告を始めた。


(┘´_ゝ`)┘「本日の弟者ヘッドラインは3本。
         スーパーの米がマズイ
         部屋の掃除にチャレンジするも失敗
         英語で道案内に成功。弟者喜びを語る!の3本だ」

∬´_ゝ`)「カッコつけないでよろしい」

( ´_ゝ`)「……調子に乗っていた、今では反省している」


姉者の手前、一応は肩をすくめてみせてから、家族の反応を伺う。
「へーなのじゃー」と言いながら妹者はケーキをもぐもぐと食べていて、父者と母者は……。


 @@@
@#_、_@ 
 (  ノ`) 「あの子は掃除もろくに出来ないのかい!」

 彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「落ち着いて、母さん。ほら、道案内はちゃんと出来たみたいだし。ね?」


ちょっとばかし、ご乱心だった。
「家事くらいできないで、あの子は」と呟く母者を、父者が必死になだめている。
弟と同じく掃除が苦手な俺としては、母者の怒りがこちらに向かないことを祈るばかりである。
しかし、話題はスーパーの米に行くと思っていたのだが、正直意外な反応であった。



 @@@
@ _、_@ 
 (   ノ`) 「道案内ねぇ……観光ガイドができるくらいにはなってるのかどうか」

 彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「母さん。弟者は勉強をしに行ってるんだよ。だから、ガイドとかは……」

 @@@
@ _、_@ 
 ( * ノ`) 「あの子が向こうにいるうちに、家族旅行で遊びにいきたいねぇ」

∬*´_ゝ`)ノシ「あ、私も行きたい! 一緒に連れてって!」

l从・∀・*ノ!リ人「ちっちゃい兄者に会えるのじゃ? だったら行きたいのじゃ!」


母者たちの会話に父者の顔色がさっと青くなる。
ひのふのと指折り数えているのは、旅費の計算でもしているのだろうか?

 彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「母さん。流石に家族全員で行くのは金が……」

( ´_ゝ`)「……父者」

 彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「兄者、お前も母さんたちを説得してくれないか!」

( ´_ゝ`)b「行くなら当然、俺も連れて行ってくれ。
       なんてったって、俺は弟者のお兄ちゃんなんだからな」



───────────────━━━━━━━━━━━━━━━━───────────────



∬´_ゝ`)「へー。兄者が連絡とってるんだ」


半泣きになった父者をよそに、海外旅行の話でさんざん盛り上がった後、姉者は言った。
俺はすごいだろうとばかりに胸を反らしてから、大きく頷く。


( ´_ゝ`)> エッヘン

l从・へ・ノ!リ人「おっきい兄者ばっかりずるいのじゃー。
         妹者もちっちゃい兄者といっぱいお話したいのじゃー」

∬´_ゝ`)「あれ? 電話じゃないの? 妹者にかわってあげればいいじゃない」

(;´_ゝ`)「む。それはだなぁ……」


姉者の言葉に、俺は言葉を詰まらせる。
確かに俺は弟者と連絡をとってはいるのだが、それをどう説明したらいいものか……。
だって、弟者の声はヘッドフォンを通して聞こえてくるのだ。そこに特別な仕掛けなんてない。

 @@@
@ _、_@ 
 (   ノ`) 「電話は高いからね。大体の連絡は、兄者がファミコンでやってるのさ」


……母者よ。助けてくれるのはありがたいが、流石の俺でもファミコンじゃ連絡できない。
おそらくこれはパソコンと言いたいのだろう。



∬*´_ゝ`)「パソコン? 電話代浮くの? 
      だったら、私のパソコンにも設定してくれない?」


姉者が母者の言葉に瞳を輝かせる。
母者のファミコンが、しっかりパソコンになっているあたりそつがない。
しかし、パソコンか。母者たちにはそう説明してあったのだな。すっかり忘れていた。


∬´_ゝ`)「さあ、愚弟。私のパソコンに電話代無料の恩恵を」

(;´_ゝ`)「姉者はパソコンがさっぱりじゃないか。
      買ったはいいが一度も触ってないんだろう?」

∬;´_ゝ`)「む。そういえばそうね……」


姉者がむうと息を呑む。
暴力や悪口に訴え出ないところを見ると、俺の言葉は姉者の痛いところをついていたらしい。
流石の姉者も、それ以上は追求して来なかった。


 @@@
@ _、_@ 
 (   ノ`) 「ぱそこん? ファミコンだろ?」

 彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「……そうだね、ファミコンだね」

l从・∀・ノ!リ人「ふぉみこんってなんなのじゃ?」

 @@@
@ _、_@ 
 (   ノ`) 「ファミコンていうのはアレさ。テレビがついててカタカタと言う……」

 彡⌒ミ
(;´_ゝ`).。oO(それは多分、違うぞ母さん)

l从・∀・*ノ!リ人「へー、すっごいのじゃー」


俺の横では、母者たちがファミコンについて話に花を咲かせている。
どれだけパソコンという言葉が出ても、母者の中では既にファミコンなのだからいっそ清々しいばかりだ。


∬;´_ゝ`)「なんというか、流石よね母者」

( ´_ゝ`)「……流石だよな、母者」


姉者がいるという珍しい事態が発生しているが、それでも我が家はいつも通りの平和な休日だった。




───────────────━━━━━━━━━━━━━━━━───────────────



(*´_ゝ`)「食った食った、満足」


部屋の中央に陣取っている二段ベッド。
その下の段へと向けて、思いっきりダイブしながら俺は目を閉じた。
満たされた腹に、布団のフカフカがたまらなく気持ちいい。

ひさびさに食ったケーキはとんでもなく美味かった。
ケーキといえば誕生日とクリスマスにしか食べられない貴重品。
それを土産にするなんて姉者はセレブかと思うのだが、いつもなら同意してくれるはずの弟はここにはいない。


( ´_ゝ`)「そういえば弟者のやつ、ケーキ食いそびれたのか……」


あいつもケーキ食いたかっただろうなぁと、ふと思って。
弟は家どころかこの国にはいないのだと、改めて気づいてしまった。


( ´_ゝ`)「……これはマズいぞ」


胸のあたりがざわざわとする。
……これはよくない兆候だ。



姉者が一人暮らしを始めた時もそうだったが、家族がいなくなると落ち着かなくなる。
我が家みたいに家族が多くて賑やかだと、特に。
普段は何も感じないのだが、ふとした瞬間にその不在に気づいてしまう。
そうすると、今にみたいに胸がざわざわとして妙に寂しくてたまらなくなる。


( ´_ゝ`)「……まあ、結局のところは慣れるんだけどな」


姉者の時だって、そのうち慣れたのだ。
いつも一緒だった弟の不在にだってやがて、慣れる。だから、おちつけ俺よ。
弟の留学はたかが1年。ずっと不在というわけでもないじゃないか。


( ´_ゝ`)「姉者とちがって俺らの場合はいつだって話せるし……」


ヘッドホンを耳に当てる。
何にも接続していないヘッドフォンからは、何の音も伝わってこない。
外の音を、少しだけ遠ざけながらヘッドフォンは沈黙を保っている。
それにむかって俺は話しかけようとして、



l从・∀・*ノ!リ人「おっきい兄者は、何をしてるのじゃ?」

( ;゚_ゝ゚)て「うおっ!」


耳元に響いた高い可愛らしい声に、俺はぎょっと目を開いた。
見れば二段ベットの柵の向かい側、俺の枕元に妹者が立っている。
妹者よ、いつの間に部屋に入った? せめてノックくらいしてくれ。と思うが、入ってきてしまった後ではもう遅い。


(;´_ゝ`)「急にどうした、妹者?」

l从・∀・ノ!リ人「妹者、おっきい兄者におねがいがあって来たのじゃー」

( ´_ゝ`)「お願い?」

ol从>∀<*ノ!リ人oミ「妹者も、もっとちっちゃい兄者とお話ししたいのじゃ。
            だから、おっきい兄者がちっちゃい兄者とどうやってお話してるのかしりたいのじゃー」

( ´_ゝ`)「……ふむ、そうか」


妹者の言葉に、俺はふと考えこんで。
すぐにとんでもない、問題に気づいてしまった。
どうやってお話しているのか、知りたい。さっきの姉者もだが、それは俺にとって最大の問題だった。



(;´_ゝ`)「どぉぉぉ、しても知りたいのか?」

l从・∀・ノ!リ人「しりたいのじゃー」

( ´_ゝ`)「絶対?」

l从・∀・ノ!リ人「ぜったいのぜったいのぜったいなのじゃ!」


妹者の目は真剣そのもの。絶対引き下がらないぞ、と言っている。
俺だって妹は可愛い。そんな目で見られたら、口を滑らせたくなる。
どうしたもんかなぁと思うが、かわいい妹を雑にあしらうのも気が引ける。


( ´_ゝ`)「……俺が話すことは誰にも言っちゃダメだぞ。
      父者にも母者にも姉者にも、知っている人にも、知らない人にも、お友達にも、先生にも、近所の人にもだ。
      秘密を守れないような子には、何も言えないぞ」


とりあえず、そう言って誤魔化してみる。


l从・∀・ノ!リ人「末者くんにも?」

( ´_ゝ`)σ「いとこもダメ。だから、末者も却下。親戚にも親友にも偉い人にもダメー
        もちろん渋沢おじにも、爺者にも婆者にも言ったらダメだからな」

ムムーl从・∀・;ノ!リ人



妹者は真剣に悩んでいる。
みんなに話したいけれど、そうすると俺が教えてくれないしということだろう。
俺としてはこのままあきらめてほしいのだが、そうはいかないかもしれない。


l从・∀・ノ!リ人「わかったのじゃ、ヤクソクするのじゃ!」

( ;´_ゝ`)「約束しちゃうか。ヤッパリナァ…」


悩んだ末での妹者の回答に、今度は俺がどうやって答えようと悩む。
このまま素直に答えてしまってもいいのだろうか?
妹者はまだ小学生。しかも、低学年だ。
仮に妹者がうっかり喋ってしまったとしても、誰も信じないだろう。

  _,
( ´_ゝ`)「……」


俺は悩む。
……しかし、結論はすぐに出た。
妹者は約束を守ろうとしているのだから、俺も約束は守らなければならない。

だから、俺は。
妹者からの問いに真剣に、答えを返した。


( ´_ゝ`)「妹者。俺はな、遠くにいる弟者とお話することができるんだ」


l从・∀・ノ!リ人「しってるのじゃー。
         妹者がしりたいのはどうやってお話してるのかなのじゃ!」

(;´_ゝ`)「……」

l从・∀・*ノ!リ人「教えてほしいのじゃー」


……真剣に答えたのに、信じてくれないとは思わなかった。
まあ。俺の説明が悪かったのだが、ここからどう説明したもんかなぁと頭を抱える。


( ´_ゝ`)「えっとな、弟者の声はヘッドフォンの向こうから声が聞こえるんだ」

l从・∀・*ノ!リ人「すっごいのじゃ! どうやってなのじゃ?」

(;´_ゝ`)「どうやってと言われても……」


どうやら信じてくれたようだが、俺は再び言葉につまる。



ヘッドフォンの向こうから、弟者の声は聞こえてくる。


理論なんて考えたことは、これまで一度もなかった。
しかし、詳しいことはわからないなんていまさら言えない。
妹者の顔は笑顔だけれども、真面目で。真剣に理由を知りたがっている。


l从・∀・*ノ!リ人「妹者はヤクソクしたのじゃ!
         だから、どうやったらヘッドホンでちっちゃい兄者とお話できるのかおしえてほしいのじゃ!」

(;´_ゝ`)「……」


俺は、息をのんで妹者の顔を見る。
そして、やっとのことで口から飛び出したのは、


ヽ( ´_ゝ`)ノ「これは最新技術の粋を尽くした魔法の道具だ!」


――昔、誰かに話した言葉だった。




いつ誰に言ったのだろうとふと思うが、俺の口はとっさに飛び出して来た言葉に乗っかるのに必死だった。
言葉を尽くしこのヘッドフォンがいかに素晴らしいのか、力説する。


l从・∀・ノ!リ人「さいしん……まほう? まほうなのじゃ?!」


妹者の顔が、きょっとんと不思議そうな顔を浮かべる。
しかし、それもすぐに瞳を輝かせる表情へと変わる。


十+l从・∀・*ノ!リ人「すっごいのじゃ、おっきい兄者すっごいのじゃ!!!」

⊂( ´_ゝ`)∩「しかーし!」



( -_ゝ-)「このヘッドフォンを使いこなすには、厳しい修行を何年も受けなければならない。
      だから、妹者にはまだ使いこなすことはできないのだ……」

l从・д・;ノ!リ人「だったら、れんしゅーするのじゃ!」

( ;´_ゝ`)「む。しかしだなぁ、練習してもきっと使えな」

l从>д<;ノ!リ人「れんしゅーしてみないとわからないのじゃ!」


どうやら調子に乗りすぎてしまったみたいだ。妹者は練習すると頑なに主張し続けている。
それに負けて、俺は渋々ヘッドフォンを外すと、妹者の頭に被せる。
しかし、妹者には大きすぎたようで、耳にあたる部分が傾きすぐにはずれてしまう。


ol从・へ・;ノ!リ人o「むむむー」


右に大きく傾いたヘッドフォンを真ん中に戻し、なおったと思ったら今度は左に。
なかなか思うようにならないヘッドフォンに悪戦苦闘する妹者を微笑ましく見守る。
大きいヘッドフォンをどうにか直そうとする姿が記憶の中の誰かの姿に重なり、


    ( <_ )


俺はさっきの言葉を誰に告げたのか思い出していた。



---------------------------------------------------------------------------


(´<_` )「みんなにキモチワルイって、いわれた」


( <_ )「――おれにだけ、兄者の声がきこえるのはヘンだって」


(;<_; )「兄者は家にいるのに、なんで声がきこえるんだって」


すっかり、忘れていていた。
俺があの言葉を告げたのは、弟だ。


あの頃の家には携帯電話なんて気の利いたものはなかったから、俺は父者と母者の部屋からヘッドフォンを持ちだしたのだ。
黒くて大きな、耳あてのついた機械。
ここにはいない人の声や、音が聞こえる道具。
まるで魔法のようなその機械を弟者に手渡しながら、妹者よりも小さかった当時の俺は言ったのだ。


ヽ( ´_ゝ`)ノ「これはサイシンギジュツのすいをつくしたマホウのどうぐだ!」



――そうだ。完全に忘れていた。
ヘッドフォンなんてそもそも必要なかったのだ。

俺と弟者は、どれだけ離れた場所にいても話をすることができた。
電話が伝わるように、ごく普通に。
俺と弟者の間にだけ、言葉がぽーんと伝わるのだ。

……それに気づいたのはいつのことだったか、思い出すことが出来ない。
俺と弟者はいつでも一緒だったから。
離れ離れになることなんてなかったし、だからふとした拍子に弟の声が遠くから聞こえても不思議に思うことなんてなかった。


だから、昔。
俺が風邪をひいて、休んだその日。
弟者が泣きながら言った言葉に、本当に驚いたのだ。





( ´_ゝ`)         (;<_; )


弟は泣いている。
俺だって、みんなに気持ち悪いなんて言われたくない。
だから、その時の俺は必死で考えて『超スゴイ道具』をでっち上げることに決めたのだ。
それが父者の部屋から持ちだしたヘッドフォン。


(;´_ゝ`)「ちょースゴイんだぞ! サイシンギジュツでマホウなんだぞ!」

(´<_` )「……ほんとう?」

(*´_ゝ`)「ああ、そうだ。このどうぐはここにいない人の声がきける、すっごいやつだ!」



今思えば、アホなことこの上ない。
だけど、その時の俺と弟者にとって、友達に気持ち悪いと言われるのは世界の終わりと同じだったのだ。
そして、それを解決してくれる『超スゴイ道具』は俺たちにとって世紀の大発見だったのだ。


( ´_ゝ`)「だから、とおくにいるオレの声がきこえてきたってぜんぜんヘンじゃないんだ」

(´<_`*)「……」

( ´_ゝ`)「サスガだろ」

(´<_`*)「ああ。サスガだな、あにじゃ!」


弟者が笑ったから、それでいいとその時の俺は深く考えずに思ったのだろう。
なんて健気な、兄心なことか。……アホだけれども。


(*´_ゝ`)「もっとほめろ!」

(´<_` )「それはヤダ」


ヽ(;´_ゝ`)ノ「なんと!」



その日から、俺と弟者の遊びの中にヘッドフォンをつけて会話することが加わった。
父者のヘッドフォンは大きすぎて、弟者はいつも妹者のようにヘッドフォンの位置を直していた。


( ´_ゝ`)「弟者、きこえるか?」


                                     『ああ、きこえる』



いろいろなことを、試して遊んだ。
トイレと自分たちの部屋。
家の外と、部屋の中。公園と家。学校と公園。駅と家。隣の街と家。


ヘッドフォンさえつけていれば、どんなに離れていても言葉が通じる。
他の誰も持っていないし、真似だって出来ない。それがたまらなく楽しかった。
お年玉とお小遣いが貯まれば自分のヘッドフォンを買って、それで遊んだ。

おかげで携帯を買って貰えるような歳になっても、連絡手段はずっとヘッドフォンのままだった。
そして気づけば、ヘッドフォンがあるから俺は弟者と話ができるのだと思い込むようになっていた。


――双子の間にはテレパシーがある。
そんな胡散臭い話が、世間でわりと知られるようになるよりも前の話だ。



---------------------------------------------------------------------------


ol从・∀・ノ!リ人o「あーあー! ちっちゃい兄者ー、ちっちゃい兄者ー!」


妹者はヘッドフォンに向けて声を上げている。
しかし、こうして思い出してみれば、さっき妹者にヘッドフォンの素晴らしさを力説したのは大間違いだったのかもしれない。
俺と弟者の間に言葉が通じるのはヘッドフォンがあるからではなくて、……多分双子だからだ。
だから、妹者がどれだけ頑張っても、弟者に言葉は通じないのではない、か?


(;´_ゝ`)「げ」

ol从・∀・*ノ!リ人o「どうしたのじゃ?」

(; ゚_ゝ゚)「な、なんでもない件について。本当になんでもないぞ!」


マズイことに気づいてしまった。
いろいろと誤魔化しながらも、妹者からヘッドフォンを取り返そうと試みるが、今さらうまくいくはずがない。
妹者は俺の言葉をすっかり信じこんでしまっていて、弟者と話そうと真剣になっている。


ol从・~・ノ!リ人o ムー

( ´_ゝ`)「ほら、妹者にはまだ早いからな。な?
      じゃあ、そのヘッドフォンを早く返して……」


ol从・∀・;ノ!リ人o「そんなことないのじゃ!」


慌てた拍子に、妹者の頭から肩へとヘッドフォンがずり落ちる。
それを慌てて直そうとする妹者の姿が妙にかわいらしくて、つい笑ってしまう。
……そうじゃないだろう、俺。
なんて最低な兄貴なんだと、自己嫌悪の気持ちが湧き上がるが、妹者はそんなことにお構いなしだった。


ol从・д・;ノ!リ人o「おっきい兄者が見てるからだめなのじゃ、一人でれんしゅーするのじゃ!」

(; ´_ゝ`)「……貸してもいいが、夕方までには返せよ」


なんとか、それだけを告げる。
俺の頭の中は大嘘をついてしまった。どうしようという言葉でいっぱいだ。


ol从・∀・*ノ!リ人o「はあくなのじゃ! 妹者にまかせるのじゃ!」


言うが早いが、両手でヘッドフォンを押さえながら妹者が部屋から出て行く。
一体どこで練習するのかわからないが、妹者はとても楽しそうだ。
「転ばないように気をつけろよ」となんとか声を出して、俺は去りゆく妹の姿を呆然と見送る。


ol从^ー^*ノ!リ人o


こんな状況だというのに、新しいおもちゃを手に入れたような妹者の顔は、昔の自分や弟を見ているようで妙に懐かしかった。


(;∩_ゝ`)「流石は妹者。小さくても俺らの妹だよなぁ
      でも、どうしたもんかなぁ。派手に嘘ついてしまった……」


さてと、とつぶやいて、俺は立ち上がる。
ヘッドフォンも貸してしまったし、何より罪悪感がひどくて昼寝をする気分でもない。

今日はどうしようか。
ひさびさに散歩に出るのもいいかもしれない。
それよりも妹者の修行のお手伝いか。妹者には悪いことをしてしまったから、わびを入れなければならない。


( ´_ゝ`)「やることは山積みだな」



それが終わったら、弟者に報告しよう。
姉者が家に帰ってきていること。
ひさびさに食べたケーキはうまかったこと。
妹者には悪いことをしてしまったということと、
それから、妹者がさみしがってるからたまには電話もかけろと言ってやろう。


( ´_ゝ`)「――あ、その前にヘッドフォン返してもらわないとなぁ。
      やっぱアレがないと、弟者と話してるような気がしないし」


流石家発、弟者着のヘッドライン。



拝啓、海の向こうの弟。
今日も我が家は平和です。そちらはどうですか?


……海の向こうで勉強中の弟は、どんな返事を返してくれるだろうか?




━━━━━━━━━━━━━━━────────────────━━━━━━━━━━━━━━━


ふと寒さを感じて、開けていた窓を閉めた。
昼がどれだけ暑くても、こちらの夜は少々冷える。
これからどんどんと暑くなる日本とは、ちょうど逆だなとふと思う。


ハハ*ロ -ロ)ハ∩「オトジャー!
          ハインやジョルジュがおかし食べる言てマスヨー」


ふと顔を上げると、部屋のドアの前に同じ寮で暮らす寮生の姿があった。
大きな眼鏡をした彼女の名前は確か――、


(´<_` )「……ハロー?」

∩ハハ ロ -ロ)ハ∩「YES! さんハローでス!」


ハローの日本語はかなり怪しい。
英語で話してくれてもいいのだぞと言うが、彼女は「日本語おベンキョでス」と頑なに日本語で返す。
彼女の日本語としばらく格闘した結果、どうやらハインリッヒの部屋でお菓子パーティーをすると言いたいらしいと何とか理解する。


ハハ ロ -ロ)ハ「イきマスか? ないデスか?」

(´<_` )「少し遅れて行くから、先に行って始めていてくれ」


ハローは俺の返事に肩をすくめて、両手を広げる。
こちらの人間はなんとも仕草がオーバーだなと思いながら、俺はすまないと軽く謝罪をしようとする。
が、ハローの表情が変わっていることに気づいて、その言葉をひっこめた。


ハハ*ロ -ロ)ハ「OH! オトジャー、どうマシた?
       ヘッドフォン? オンガク? リッスン?」

(´<_` )「ん。少しばかり家族と連絡をな」


……しまった。返事を間違えた。
普通は家族と連絡するのに、ヘッドフォンなんてほとんど使わない。


ハハ ロ 、ロ)ハ「オンガクちがうデスか……」


俺の言葉など気にもとめないで興奮したようにまくし立てたハローは、しょんぼりとした表情を浮かべる。
「音楽が好きなのか?」と、会話をつなごうとしたが、それよりも早くハローの言葉が飛ぶ。


ハハ ロ -ロ)ハb「ヨイですネー。ファミリーよいです。
        デンワ? テガミ? PC?」

(´<_` )「そうだな……まあ、そんな感じだ。
      昼に突然、『どうする、弟者?』なんて聞かれてそのままだから、詳しく話を聞こうと思ってな」


なんとかごまかしながら答えた所で、ヘッドフォンの先には何にも繋がっていないことに気づく。
これも失敗だ。マズイなと一瞬思ったが、その時にはもうハローは廊下へ出て行こうとしていた。
……いろいろとやらかしてはしまった気がするが、気づかれていないようならそれでいいかと思い直す。


ハハ*ロ -ロ)ハ「部屋ハインのデス! ミスター・シナー、国の菓子もてくるいいマス!」

(´<_`*)「把握した!」

ハハ ロ -ロ)ハ「HA-AKワカナライですガ、待てマス!」


言うが早いが、ハローは廊下へと飛び出していく。
途中で転んだらしく派手な音がするが、それもすぐに止んだ。


(´<_`; )「……行ってしまった。せわしないやつだな」




ハハ ロ -ロ)ハ「ハーイ、ニダー!」

<ヽ`∀´>「ハロー、ハローニダ!」

ハハ#ロ -ロ)ハ ムッ


ドアの向こうからは、ハローの元気な声が響く。
そして、彼女の声に答えているのは……やはり留学してきているニダーだろうか?


ハハ#ロ -ロ)ハ「ハロー、一かいいいデす!」

<#ヽ`∀´>「なんでウリにチョパーリの言葉で話しかけるニダか!
       ウリは誇り高い大……」

ハハ*ロ -ロ)ハ「WAO! ニダーの日本語ジョーズでス!」

<*ヽ`∀´>て 「!」


二人の会話はイマイチ意味が読み取りづらい。
でも、本人たちは怒ったりしながらもどこか楽しそうだ。

――こちらの友人たちはいつもにぎやかで、俺は今日も退屈しない。



(´<_` )「PCはまだ起動しないか」


廊下から聞こえる声をなんとなく聞きながら、起動しかけのPCに端子をつなぐ。
本当ならばそんな必要なんてないのだが、大の男が虚空に向けて会話をするところを見られるのはゴメンだ。
きちんと起動したらカモフラージュ用の通話ソフトでも立ち上げるか、と思いつつ声を上げる。


(´<_` )「あーあー、聞こえるか?
      こちら弟者。何か変わりはあったか?」


耳朶を打つのは、海の向こうから届く、双子の片割れの声。
それに答えるようにして、俺は声を上げた。


(´<_` )「ふざけるなって?
      ふむ。兄者は自分が今朝、何を言っていたかと小一時間」


俺は兄者と話す。
さて、兄者はどんなニュースを送ってくるだろうか?






ヘッドフォンのその向こう。
一時間の時差を超えて今日もまた日本から、ヘッドラインが届く。










( ´_ゝ`)ヘッドフォン、ヘッドラインのようです(´<_` )   了












13年のゴールデンウィークに開催された、ブーン系ゴールドラッシュ2013  ~突発! タイトル祭り~(キンタ祭り)参加作品


使用タイトル
( ´_ゝ`)ヘッドフォン、ヘッドラインのようです(´<_` )

お題
大嘘

縛り
流石一家全員の使用(父者、母者、姉者、兄者、弟者、妹者を作中に出す)


GW投下作品3本目。GWに書いたやつの中では、これが一番難産だったかも。
デザート×キャラバンで出せそうになかった要素を、お鍋でことこと煮込んでみたらこんな感じになった模様。
家族団らんが書けてとても満足している。


まとめは⊂ブンツンドー⊃様の祭りまとめページこちらです。
ありがとうございました。

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