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(#゚;;-゚)小さな獣は、「蔵の中」のようです

――ちりんと音が鳴った。


視線を上にあげると、そこには風鈴とかいうものが揺れていた。
日の光を浴びて揺れる風鈴は、この世のものではないかのように輝いている。
ちりんちりんとなる音をもっとよく聞こうと、私は耳を澄ます。


(#゚;;-゚)「……きれい」


ちりんという音に混じって、じぃじぃという虫たちの声が響く。
あれは蝉という虫のものだと昔、母さまは言っていた。
もう、蝉の鳴く季節。


(#゚;;-゚)「……夏……だね」


白い箱を抱きしめて、小さな窓を見つめる。
格子の向こうに見える空が、ひどく青い。





(#゚;;-゚)小さな獣は、「蔵の中」のようです





私に風鈴をくれたのは、時折世話を焼いてくれる男の人。
タカラさんというその人は、私の世話をしてくれる人の中で一番綺麗な服を着ている。
私があったことのある人の中で一番優しくて、それにたくさんお話してくれる。
たまにしか来てくれないけど、私は母さまの次くらいにタカラさんが好きだった。


(,,^Д^)「ここはひどくさびしいですから」


タカラさんはそう言って、たった一つしかない窓に風鈴を飾ってくれた。
私はそれが嬉しくてちょっと笑った……のだと思う。


(,,*^Д^)「あ、初めて笑ってくれました」

(#゚;;-゚)「……わらっ…た?」

(,,*^Д^)「ええ」


タカラさんと話していると、胸がふわふわしてあったかくなる。
だから、タカラさんのことが好き。
タカラさんがくれた風鈴も、好き。


(,,^Д^)「女の子は、笑っている顔が一番です」


タカラさんの笑っている顔が、一番好き。




(,,;^Д^)「お、女の子?!」


――初めて会った時、タカラさんは他の人と同じで驚いたみたいだった。
だけど、怖がる顔も、意地悪そうな顔も、馬鹿にするような顔もしなかった。


(,,;^Д^)「えっと、はじめましてかな」


私の姿を見て戸惑ったのは少しの間だけで、その後は普通に話しかけてくれた。
母さま以外の人と話すのははじめてだったから、私は驚いてしまった。
私とお話してくれる人がいるなんて、それまでの私は考えたことなんてなかった。


(,,^Д^)「こんにちわ」

(,,;^Д^)「……女の子なのだから、着物はちゃんと着ないとだめですよ」

(,,^Д^)「そうだ、今日はお話しませんか?」


タカラさんの声にどうしたらいいのかわからなくて、はじめ私は黙っていた。
大切にしている白い箱をぎゅっと抱きしめて、じっと床を見つめる。
そうすれば、母さまが「どうしたの?」って言ってくれるような気がした。

でも、母さまは何も答えてなんかくれなくて、私は途方に暮れた。



(,,;^Д^)「あー、私はこわくなんかないですよー。
     えーっと、むしろあなたと会ってみたかっただけなんです」


初めは、話しかけてくれるだけ、来てくれるのもたまにだけ。
それが、だんだん来てれる回数が増えるようになった。


(,,^Д^)「ご飯をもってきましたよ」

(,,;^Д^)「……体、拭いたほうがよさそうですね」

(,,*^Д^)「今日は掃除をしましょう」


ご飯を持ってきてくれるようになって、それからお掃除や体をふいてくれるようになって。
タカラさんがくるのが待ち遠しくなって、少しずつお話ができるようになった。


(#゚;;-゚)「……タカラさんは、……山…行ったこと……ありますか?」

(,,^Д^)「え、山ですか?」

(#゚;;-゚)「……はい」

(,,^Д^)「えーっと、ですねぇー」


タカラさんがいると、この世界が楽しくなる。




閉ざされた入口と、あちこちに貼られたいろいろな紙、格子がはまった小さな窓。
暗がりにはいろいろなものが詰まったたくさんの箱たち。
それから布団と、着るものがいくつか。

私たちのいる世界を、母さまは「蔵の中」と呼んだ。


lw´‐ _‐ノv「――ここには何もない。
       木も、空も、岩も、土も、花も、草も、昼も、夜も」


そう言って、母さまは泣いた。
私の知らないたくさんのものたちを思って、いつも母さまは泣く。


lw´‐ _‐ノv「――山、山へ、山に、山へと帰らないと」


「蔵の中」の外にある、山。
そこには母さまの大切なものたちと、――父さまがいる。


lw´‐ _‐ノv「私の小さな獣」

(#゚;;-゚)「……何?……母さま」

lw´‐ _‐ノv「ずっと一緒にいて。そばから離れないで」



私の父は、獣だったのだという。



蔵の中よりも深い黒の毛並みに、満月の色の瞳。
その耳は隣の山の音をも広い、その声は何処までも轟く。
駆ける姿は風のようにしなやかで、その牙と爪は巨大な岩をも切り裂く。


lw*´‐ _‐ノv「私の獣。
       何よりも強く、美しく、気高い生き物」


母さまは7つのとき、神隠しにあった。
10年の後に山で見つかった母さまは、7つの時とほとんど変わらない背格好だったという。
ただ、10年前とは違うところが一つだけあった。


lw´‐ _‐ノv「――山へ帰して。 獣、私の獣はどこ?」


それは、私が母の腹の中にいたということ。
そして、それが私と母が「蔵の中」で過ごすことになった理由だ。



――神隠しにあった母の産んだ子には、獣のような耳と尾があった。



私の耳は、些細なもの音をもひろう獣の耳。
私の尾は、ある時には思い通りに動くもう一つの手。
私の目は、母さまよりも少しだけ暗い場所でも見える目。


lw´‐ _‐ノv「あなたの父さまと同じ耳。
       だけど、尾は違う。あなたの父さまの尾は二つ」


私の祖父と祖母に当たる人は、私の耳と尾を見て刃を向けたのだという。
母がいなくなったと嘆き悲しみ、母が帰ってきたと喜んだ人が。
あるいは、母がいなくなったと喜び、母が帰ってきたと憎々しく思った人が。


ミ,,# Д 彡「この耳と尾さえ!!!」


今も私の体中に残る傷は、その時のものだと聞く。
何故、私がいまも生きているのかはわからない。
でも、死ななくてよかったと思う。


lw´‐ _‐ノv「獣。私の、獣の子。――私の小さな獣」


死んでいたら、母さまに抱きしてもらうこともできなかったから。





――風鈴の音が蔵の中に響く。

ちりんと音がするたび、私の耳が音を拾おうと動く。
ちりんと音を聞くたびに、私の尾がぱたりと動く。
尾が動くたびに邪魔になる着物の帯はとうの昔に解いている。


(#゚;;-゚)「……ちりん」


小さくつぶやいてみる。
何処にでも轟くわけでもない私の声は、蔵の中に小さく響く。
早く、タカラさんが来てくれないかなと考える。


ガラスが、キラキラと光る。 風に短冊が揺れ、音が響く。
ちりん ちりん


(#゚;;-゚)「……きれいだね……母さま」


白い箱をそっと抱きよせる。
いつでも近くに置いてあるそれは、母さまが残してくれたもの。
母さまのかわりに、いつもそばにいてくれる。


私の母さまは、もういない。





(,,^Д^)「あ、風鈴を見てたんですか?」


箱を抱いて風鈴を見ていると、タカラさんが入口の扉と格子を開けて入ってきた。
この入口はタカラさんや、お世話の人たちじゃないと開けられない。
母さまはこの入口も格子も、あちこちに貼られた紙も、窓も大嫌いだった。


(#゚;;-゚)「……はい。これ……好き……です」

(,,*^Д^)「ほんとですかっ?! うれしいなぁー。
      あなたが好きそうなものといったら、その箱以外思いつかなくて」


何日かぶりに会うタカラさんの笑い顔は、とってもまぶしかった。
タカラさんのにこにこした笑顔がうれしくて、私も真似して笑う。
そうすると、タカラさんがもっと笑ってくれて、私はうれしくなる。


(,,^Д^)「あ、そうだ箱と言えば……その箱、何が入っているんですか?」

(#゚;;-゚)「……これ……です……か?」


タカラさんの言葉に、私はぎゅっと抱きしめていた白い箱を開いてみせる。
中にあるのは、母さまが残してくれた大切なもの。
箱の中に入っているのは――、

母さまの、されこうべ。




lw´‐ _‐ノv「帰りたい。帰らなければ。帰ろう。」


母さまは、ずっと「蔵の中」から出たがっていた。
開かない入口を叩いて、届かない窓に手を伸ばして、
私たちの世話を焼く人に追いすがって、たくさん殴られて、痛い思いをして、


lw´‐ _‐ノv「かえりたい」


母さまはいつだって、そう願っていた。
七つのときからちっとも変わらない姿で、同じ年頃に成長してしまった私を抱いて……。


lw´‐ _‐ノv「ああ、聞こえる。
       声が、私の、私の獣っ、ああ、ああ、ぁあ」


――そして、雷の鳴り続ける嵐の日。
私の腕に抱かれて、小さな私の母さまは息をすることをやめた。


lw ー ノv「わたしの ろま」


その時、大きな大きな大きな雷が落ちたのを覚えている。





(,,; Д)「――これは」


動かなくなった母さまは、連れて行かれた。
私がいくら泣いても、暴れても、だめだった。


(#゚;;-゚)「……母さま……です……」


そして、母さまはこの白い箱につめられて戻ってきた。
何も話しかけてはくれないけど、帰ってきてくれた。
母さまの大切なされこうべ、私に残してくれたされこうべ。


((,, Д )「そんなっ、こんな、どうして」


だけど、タカラさんは笑ってはくれなくて。
代わりに流れたのは、涙。 私の好きな笑顔は、そこにはなかった。


(#゚;;-゚)「……どうして……です……か?」


私はタカラさんが泣くのが悲しくて、泣きやんでほしくて……。
タカラさんの質問にちゃんと答えられたら、もうタカラさんは泣かないんじゃないかと思って。
タカラさんの知りたい「どうして?」に、答えることにした。


(#゚;;-゚)「……『汚れているから』
    焼かなきゃ……だめだから……私も…死んだら…こう…って」


箱の中の母さまを連れてきてくれたのは、私の祖父に当たる人。
顔も忘れるくらい会ってなかったその人は、私にそう言った。
その時の祖父の顔を私は覚えていない、でもその声は震えていて。


(#゚;;-゚)「お墓は……だめ……
    みんな……汚れる……って」


多分、泣いていたのだと思う。
私には、それが何故かはわからない。


(#゚;;-゚)「……タカラ……さん?」

(,, - )「……」


そっとタカラさんの顔を見上げると、タカラさんはもう泣いていなかった。
でも、そこにあるのはにこにことした笑顔なんかじゃない。


(,, Д )「――畜生だ」


そこにあるのは、――真っ暗な瞳をした怖い顔だった。




タカラさんが帰ってしまって、私はまた一人。
目に痛いほどまぶしかった空も、今は夕闇の色。
あんなに綺麗だった風鈴の音も、もう止まってしまった。


(,,^Д^)「ええっと、ご飯にしましょうか?」


あの後、声をあげたタカラさんはもう、いつものタカラさんだった。
だけど、笑い顔はいつもと違っていたし、お話もしてくれなかった。


(#゚;;-゚)「……私を…嫌いに…なっちゃったの……かな」


怪我なんかしていないのに、胸がちくりと痛む。

「そんなことはないよ」って言ってもらいたくて、白い箱を抱きしめる。
だけど、母さまはもう……されこうべだから何も答えてはくれなくて、
ため息をつこうとしたその時、私の獣の耳がぴくりと動いた。

――カシャンという金属の音。
「蔵の中」と外とをつなぐ、入口の鍵が外される音。
今日はもうお食事が終わったから、誰かがここに来ることなんてない。

なのに、なのに、

人には聞こえないほどのかすかな音とともに、扉が開く。
開いた扉の向こうには、いま一番会いたい人がいた。


手には火のついた木切れ、腰には金属の音を立てる棒。
いつもと違う姿をしたタカラさんが、言う。


(,,^Д^)「……こちらへ、来てもらえませんか」


優しいけど、命令のような強さの言葉。
私は母さまの箱を抱いたまま、タカラさんのもとへと歩く。
タカラさんのいる場所……「蔵の中」の入口。その扉の向こう。
近づく。そこに行こうとする。だけど、私の心がぎゅっと痛む。


(#゚;;-゚)「……タカラさんは……痛いこと……しない?」

(,,^Д^)「ええ」

(#゚;;-゚)「私の……こと……嫌いに……ならない……?」


外に出ようとした母さまを、世話をしていた人たちは打った。
髪を引きずり回した。叩いた。殴った。打った。蹴った。
災い。祟りをよぶ。あの化け物の。きちがい。呪いだ。お前のせいで。
何故生かしている? 何故生きている? 何故死なない。


(,,^Д^)「――もちろんです」


でも、タカラさんがいるから……私の心はもう痛くない。


(#゚;;-゚)


母さまの入った箱を抱いて、歩く。
格子戸を超え、その向こうの扉をくぐる。
鍵の外された扉は、私が外に出ようとすることを拒もうとしない。


(#*゚;;-゚)


私の獣の部分がざわめく。
耳はぴんと立ち、尾はこれ以上ないくらいにふくらむ。
全身の毛がちりちりと逆立っている。


(,,^Д^)「段差がありますから、気をつけてください」


差し出されたタカラさんの手を、片手でそっと取る。
そこから、一歩踏み出すと「蔵の中」世界はもう終わっていた。


(#;゚;;-゚)「ここ……が、……山?」


さえぎるものがほとんどない世界に頭がくらみそうになる。
上には窓から見える世界が、格子にも天井にも邪魔されないでそのまま広がっている。
空気が熱くて、息のしかたがよくわからなくなりそうになる。



これが、外。
「蔵の中」ではない世界。



(,,^Д^)「いいえ、本当の外はもう少し先です。
     ――山はもっと向こう、塀を超えた先です」

(#;゚;;-゚)「……外? 本当の?」

(,,^Д^)「――ええ。連れて行ってあげます」


「ちょっと待っていてくださいね」と言って、タカラさんはさっきまで私がいた場所へと入っていく。
扉をくぐりぬけて格子を超えて、タカラさんはすぐに見えなくなる。

私と母さまの暗い「蔵の中」は、外から見ると白くまぶしくて、
そこに私と母さまがいたなんて信じられなかった。
私と母さまの世界。大きくて、空よりもずっとずっとせまい場所。


(#゚;;-゚)「母さま……見える?」


箱を開く。
すみれ色に染まった空、小さくキラキラと輝くたくさんの光の粒たち。
大きな満月に照らされたここは、「蔵の中」よりずっとずっと明るい。


(#*゚;;-゚)「これが……外……本当じゃないけど……外……だよ」


その時、バチンと大きな音をがした。
パチッ、パチッというはじける音と、たくさんの人の声。
どこかはわからない場所から響く、音たち。


(#;゚;;-゚)「……?」


耳をすませる。
私の耳は、「蔵の中」よりもはるかに多くの音を拾う。
ぴくりと私の耳は動き、尾は警戒しろとしきりに動く。


(#;゚;;-゚)「……タカラ……さん」


すみれいろの空の一角が、夕闇に染まっている。
夕焼けは終わったのに、そこだけは赤い色で、灰色の何かが空へと上っている。
たくさんの音は、そこから聞こえてくる。
何かが焦げるにおいがして、息が少し苦しい。


そうだ、あれは火の色に似ている。
夕闇に似た、真っ赤な空の色。
タカラさんの持っていた、木切れに燃える火の色。


(#;゚;;-゚)「――タカラさ」

(,,^Д^)「どうしました?」


――戻ってきたタカラさんの手に、あの木切れはない。
着物からはかすかに、苦い焦げるような臭いがする。


(,,^Д^)「お待たせしました」


「蔵の中」に、まぶしく燃える火が見える。
あちこちに貼られた紙たちが、火をあげ消えていく。
燃える火、少しずつ大きくなっていく火。
その向こうで、――ちりんとかすかに音が響く。


(#;゚;;-゚)「……風鈴……」

(,,^Д^)「――ああ、ごめんなさい。持っていくことはできないんです」


「すみません」そう言いながら、タカラさんは私の足に布を巻きつける。
くるり、くるりと布がまかれるたびに、地面のごつごつとした感触は感じなくなっていく。
足元が柔らかくなって、なんだかくすぐったい。


(,,^Д^)「今はこれで我慢してください」


「蔵の中」が、燃えていく。
たくさんの箱たちも、見上げた窓も、眠った布団も、炎に包まれていく。
燃えてしまったらどうなるのだろう、私はぼんやりと考える。
風鈴は、――ちりんちりんと、鳴り続けている。




(,, Д )


先を行くタカラさんについて行くために、足を動かす。
「走る」というのはこういう行為なのだと、私は初めて理解する。
腰に下げた棒に手をかけて先をいくタカラさんを、私は追いかける。


(,,; Д^)「――こちらです」


木がある。
草がある。石がある。土がある。井戸というもの、庭というもの。
「蔵の中」よりもずっと低かったけど、外の世界にも壁があるということを初めて知った。


(,,;^Д^)「離れまで走れば、塀が低くなります。
      そこまで――っ」


たくさんの人の声が、ざわざわと響いている。
高い音、何かが落ちる音、「逃げろっ」、ぱちっぱちっとはじける音、「もうここは危ない」
タカラさんにも、この音たちは聞こえているのだろうか?

走る
空の赤い部分はどんどん広くなっていく。
たくさんのものが燃える、消える、燃える、燃える、燃える。

――世界が真っ赤だ。



(,,;^Д^)「――もう少しっ、もう少しでっ」


「蔵の中」のような、建物の横を通りすぎる。
ずっと見えていた壁が途切れて、低くなっている。
タカラさんの息が、はずんでいる。


(,,; Д )「――外にっ」


その時、私の肌がざわめいた。
だめだ。と、私の中の何かが言う。
そこは、駄目。
息がつまる、全身の肌がざわめいて、毛が逆立つ。


(,,; Д )「――――出」


タカラさんは気づかない。
そっちへ行ったら、



(#; ;;- )「だめぇぇぇぇぇっ!!!!」


輝く光が見えた。
見えないはずなのに、確かに見えた。


(,,^Д^)「――ぁ」


嫌なにおいが広がる。
タカラさんが膝をついて、倒れる。
綺麗なタカラさんの着物が、汚れていく。

それは、


          血         だ


(#; ;;- )「タカラさんっ! タカラさん、タカラさん、タカラさんっ!!!

(,,;-Д^)「――っ」


タカラさんの体が血で汚れていく。 どうして?
タカラさんの体からは血が出ている。 どうして?
タカラさんは怪我をしている。 どうして? どうして? どうして?


ミ,, Д 彡「――お前だったのか」


血に濡れた、銀の光が見える。
タカラさんが腰に下げているのと同じ、金属の音をたてるあの棒。
刀という言葉を、そこで初めて思い出す。

そして、そこにいるのが誰かも思い出す。


ミ,,# Д 彡「擬古の家を継ぐはずのお前が何故、乱心したっ!!」


私の耳と尾を切り落とそうとした人。
私と母を「蔵の中」へと閉じ込め、鍵をかけ、白い紙たちを貼った人。
私の母を連れていき、そして白い箱に入れて戻ってきた人。


ミ,,#゚Д゚彡「何故、それを連れている!!
       それが何かをわかっているのかっ!!」


――私の、祖父。


ミ,,#゚Д゚彡「それのために、擬古の家はあの妖に祟られたのだぞ!!」

(,,;-Д^)「……っ」


私の祖父が、タカラさんを切った。
私のせいでタカラさんは、血をながしている。


ミ,,#゚Д゚彡「――それが、災いを呼ぶのだ」


祖父の手には、顔には、醜い傷跡がたくさんある。
あれも、私のせいだ。


(#;゚;;-゚)「……ぁ」


――思い出す。

祖父が私の耳を切り落とそうとした瞬間、雷が落ちた。
私を守るために落ちた雷で、祖父は傷を負った。


lw´‐ _‐ノv「――ここには何もない。
       木も、空も、岩も、土も、花も、草も、昼も、夜も」


殺せない私を閉じ込めるために、「蔵の中」の世界が出来た。
雷から、父さまから家を守るために、「蔵の中」にたくさんの紙が貼られた。
あれは父さまの力をそぐための、守り。
父さまをこの家に近付けないための、呪い。

母さまから、全てを奪ったのは私。
木も、空も、岩も、土も、花も、昼も、夜も、父さまも私が奪った。


全部、私のせい。
祖父が怪我をしているのも、家が祟られているのも、母が死んだのも、
――タカラさんがこうして、苦しんでいるのも。


(#; ;;- )「……タカラさん」


タカラさんが、私を見た。
真っ青になった顔に、やさしい笑顔が浮かぶ。


(,,^Д^)「――あなたは、何も悪くありません」


私の大好きな笑顔で、タカラさんは言う。
タカラさん。私の大好きなタカラさん。
私のせいで、死んでしまうかもしれないタカラさん。


ミ,,#゚Д゚彡「育ててもらった恩を忘れたばかりか、擬古の家に仇なし、
       言うことがそれかっ!!!」

(,,^Д^)「……私は、房様を父と慕っておりました。
     この擬古の家にふさわしい当主であるように、私なりに勤めてまいりました」

ミ,,#゚Д゚彡「だったら、何故っ」

(,,^Д^)「……それ故に、」


少しの間、タカラさんは目を伏せた。
切られたお腹が痛いのか、それともその先を言いたくなかったのか、私にはわからない。
少しだけ沈黙して、……それ故に、とタカラさんは繰り返した。


(,,^Д^)「……蔵の中に少女を閉じ込めていること、見て見ぬふりをしてきました。
     そうするのが、擬古の当主としての道だと……思っていたから」

ミ,,# Д 彡「だとしたら、何故、火などつけたっ!!」


タカラさんの顔が、くしゃりと歪む。
血の流れる腹を抱いて、それでもタカラさんは立ち続けている。


(,, Д )「――、見てしまったから。
     房様の、お嬢様。私の義姉。愁の骨を」

ミ,,;゚Д゚彡「見た、のか」


祖父の刀を持つ手が揺れる。
骨となった母を抱いて、泣いた祖父。
今ならわかる。祖父は、私の母のことだけは愛しかったのだ。


(,,^Д^)「あの子が獣なら、私たちは――畜生だ。
     少女を閉じ込め、実の娘の死に弔いもせず、何が擬古の家だっ!」


腹に置かれていた、タカラさんの手が動く。
腰に下げられた刀を抜き、銀に輝く刃を祖父へ向ける。

完全に動揺した祖父の、首をめがけて。


(,,; Д )「―――っ」


重なり合う刃と、飛び散る火花。
輝く刃は跳ね返されて、タカラさんの体に吸い込まれた。


ミ,,;‐Д‐彡「……愚か者め」


血が飛び散る。どさりと音がして、タカラさんが倒れる。
自らの血に濡れて、タカラさんは動かない。


(#;;;-)「……あぁ」


ちりんと音がしたような気がした。
私はたった一人、「蔵の中」にいて風鈴を見上げている。

そんな世界が、そんな夢が見えて、
――そんな、
                 そんなのは、嫌。


(#;;д)「ああぁああああああああああああ!!!」


気づくと私は、吠えていた。
喉などはり裂けてしまえ、もう何もない、全部いらない。


母さまがいない。
タカラさんがいない。
私の頬を生まれてはじめて、何かが流れていく。


ミ,,#゚Д゚彡「――っ、お前が高良を」

(#;;Д)「ぁああぁああああああぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!」


そして、


( ФωФ)「――もう泣かずとも、よい」


空から、懐かしい声とともに巨大な体が降ってきた。


( ФωФ)「我はお前を、見つけた。
        小さな獣。愁の娘、我が子、でぃ」


――獣。
月の明かりに濡れて浮かびあがる、黒の連なり。
夜よりも深い黒に浮かぶ、満月の瞳。

二つに分かれた尾を持つ、巨大な猫。
雷を呼び、雷とともに空を駆ける、雷の獣。


私の――、父さま。


(,,; Д )「――ぅ」


獣の耳が、タカラさんが小さく呻く声を拾う。
タカラさんの声に、私の喉からあふれていた声が止まる。


( ФωФ)「礼を言おう、小僧」

(,,; Д^)「あなた……は?」

( ФωФ)「長き間、我を苦しめたいまわしき小細工。
        うち破ったのは小僧、貴様だ。故に、我はここにいる」

(#;;;-;)「……父……さま」


タカラさんが生きている。
だけど、このままだとタカラさんは死んでしまう。
タカラさんはいない、タカラさんがいない、タカラさんのいない世界。


( ФωФ)「案ずるな、でぃ。
        ――獣は、受けた恩は忘れない」

ミ,,#゚Д゚彡「お前がっ、お前が愁をっ!!!」


血にまみれた刀を振り上げて、祖父が父さまに襲いかかる。
父さまは私をじっと見ている。


( ФωФ)「覚えておけ、でぃ。
        ――獣は、恨みもまた忘れない」


私の手にした白い箱のふたを、父さまの尾がはずした。
あらわになった白いされこうべに、父さまは頭をこすりつける。
とても、愛しそうに。父さまは目を優しく細める。


( +ω+)「随分と待たせてしまったな、愁」

ミ,,#゚Д゚彡「――娘に触れるなっ!!!!」


父さまの毛が逆立ち、銀の色に輝く。
口が大きく開かれ、血のように赤い舌と、鋭くとがった牙が現れる。
そして、父さまの何処までも轟く声が、


(#ФωФ)「                         」


数多の、巨大な雷となって降り注いだ。


――――――‐‐‐‐


( ゚д゚ )「それにしても、信じられんな」

(,,^Д^)「―‐何が、ですか?」


かけられた声に顔をあげると、兄が仏頂面でこちらを見ていた。
文士をしているとかいう兄は暇らしく、いまだに医者の世話になっている私のもとを訪ねてくれる。


( ゚д゚ )「擬古家が一夜にして、さっぱり燃えてなくなったことだ。
     確かに、前々から化け物に祟られてるとか噂があったが」

(,,;^Д^)「また、その話ですか?」

( ‐д‐ )「せっかくいい家に養子へ行ったというのに、高良もつくづく運の無い。
      焼け残ったのは風鈴一つ。こんなもん財産にもなりはしない」


財産にならないのは、兄さんの原稿だという言葉は喉にのみこんだ。
退屈な療養生活の中で、話してくれる人はそれだけで貴重だ。


( ゚д゚ )「それにしても実際、何があったんだ?
     祟りだ、落雷だ、賊だ、乱心者が火をつけただの、巷じゃ大騒ぎだ」

(,,;^Д^)「そんなこと言われても、覚えていないものは仕方ないじゃありませんか」


擬古の家が燃えてなくなった日、私は刀傷を受け倒れていたらしい。
血が多く流れ、命があったのが信じられない状態だったとのことだ。
そのせいなのか、私の記憶からは擬古家であった事件の全てが抜け落ちていた。


(*゚д゚)「まあ、燃えてなくなったって言っても、土地は残ってるんだろ?
     少しはこの兄の生活を、楽にしてくれたまえ。なぁ、新当主様」

(,,;^Д^)「それが生死の境をさまよった弟に言う言葉ですか?」


その日に起こったことは、今も思い出せない。
ただ、その日燃え残った風鈴の音を聞くたびに、浮かんでくる光景がある。


(#゚;;-゚)


窓に下げられた風鈴を見上げる、悲しそうな瞳をした少女。
獣の耳に、獣の尾。邪魔になるのか、着物の帯はほどかれている。
その少女が、私の顔を見あげて小さく微笑む。そんな光景だ。


(#*゚;;-゚)


彼女は今、微笑んでいるのだろうか。
そうであれば、いい。


――窓辺に飾った風鈴を、私はそっと見上げた。


――――――‐‐‐‐

――‐ちりんと、音が鳴ったような気がして、私は顔をあげる。
すみれいろの空の一角が、黄色に色づき始めている。
ざわざわと木々が風で揺れる。


( ФωФ)「じきに日が昇る。行くぞ、でぃ」

(#゚;;-゚)「……うん」


母さまが、なぜ山へ帰りたがってたかわかる。

昇るとぐんと視界が高くなる木、踏むとちくちくとする草、綺麗な花、ごつごつとした岩、
ざらざらとした感触の土、水がたくさん流れている川、冷たいしぶきが飛び散る滝。
青い空と日差しがまぶしい昼、静かな空気ときらきらとした星たちが見える夜。
ここには、「蔵の中」になかったものがたくさんある。


( ФωФ)「――お前も、空の駆けかたを覚えねばな」


父さまの背によじ登ると、父さまは見えない地面を踏むようにして宙を歩く。
父さまの体は風をつかみ、風のように進む。


(#゚;;-゚)「……飛べる? 私……も……?」

( ФωФ)「修練を積めば」


泣くことさえもろくに知らなかった私には、学ぶべきことはいくらでもあった。
尾の使い方、毛づくろいの方法、獲物のとりかたに、雷の呼び方。
――変化のしかたというものもあった。


( ФωФ)「ゆっくり覚えればいい。お前には、その時間がある」


もう、「蔵の中」はない。
暗くてひんやりとして、私の全てだった小さな世界。
父さまの柔らかい毛並みに包まれて、私はたまに思い出す。

たった一つの窓に揺れていた、ガラスの風鈴。
それから、私を見て笑うタカラさんの顔。


(#*;;ー)「……うん。がんばる」


もう少し、力をつけたら。
耳も尾も無い人の姿に変化できるようになったなら、タカラさんに会いに行こう。
そのとき、タカラさんは。


(,,*^Д^)


私の大好きな、笑顔で笑ってくれる。
――そんな、気がした。





ミニラノベ祭りに間に合わなくて、後日投下したもの。
こちら(リンク先、Boon Styleさん)のNo.3のイラストをイメージして書いています。
まとめは、そのたの( ・-・ )ようですさんのコチラ(イラストつき)

絵師さん、まとめさんたち、祭り関係者の方々ありがとうございました。
『☆満員御礼! ミニラノベdeヘタクソ10分絵祭り★』で感想とイラストくださった方々もありがとうございます。
愛してる、結婚してくれ。

ミニラノベ用投下絵のでぃがかわいすぎて、ついカッとなってやった。
久しぶりの完結作品に今では満足している。

投下したやつより、ブログまとめ版の方が少し長くなっています。
(レス制限の関係で削った部分を追加しているため)

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